Last Updated on 2021年1月29日 by ジョブメンズラボ
こんにちは。よっすーです。
今回、最近私が読破した漫画『幼女戦記』(カルロ・ゼン著)が中間管理職への階段をのぼる30代のキャリア形成の参考になるおススメ漫画だったので紹介します!
MBA、中小企業診断士の私が組織におけるコミュニケーション、あるいはその結果としてのキャリア形成という観点から紹介したいと思います。
本記事の内容
- 主人公は魔法の世界に転生した合理主義者
- いかに合理的で優秀でも思い通りのコミュニケーションの成立・キャリア形成は難しい
- 「感情」が認知に与える影響を理解し、職場の上司・他者を上手く動かそう
『幼女戦記』について
まず幼女戦記について、wikiを引用します。
21世紀初頭の日本。徹底的な合理主義者でエリートサラリーマンであった主人公は、同僚の逆恨みで命を落とす。死後の世界、創造主を名乗る存在Xは主人公のリアリストな言動と無信仰を咎め、戦乱の世界で苦労して反省し信仰を取り戻させるとし、孤児の少女であるターニャ・デグレチャフとして別世界に転生させる。
転生した世界は魔法技術が存在するものの、大まかに20世紀初頭の欧州に似た世界で、自身が生まれ育った「帝国」は技術大国だが経済が低迷している上に周囲諸国と外交的・軍事的問題を抱え、数年後には大戦に至る様相を呈していた。前世の記憶を維持したまま転生を果たしたターニャは、天性の魔導の才能から幼くして徴募されることとなり、それならばと士官学校へ進むことを選択する。前世の記憶を活かして軍人としてのキャリアを積み、安全な後方勤務で順風満帆な人生を送ろうと目論むターニャであったが、思惑は外れ、大戦の最前線に送り込まれ続けることとなる。
Wiki
簡単にいえば現代社会の合理主義者が、魔法がある異世界において、魔法の才能と現代社会で培った知識をもって軍人として生きるという話です。
異世界転生もののということ、そして“幼女戦記”というタイトルから敬遠されがちですが、以下のページで紹介されているように話の進め方・設定のつくり込みが異常にガチで東大生もおススメする良書です。
戦争とは何かを学ぶ漫画としても大変参考になります
主人公はいかに合理的か
主人公はシカゴ学派の信奉者です。
シカゴ学派とはM.フリードマンを代表とする経済学派の事で、新自由主義の立場です。
誤解を恐れずに簡単にいえば新自由主義は「自由を大事にしよう。合理的に考えれば、政府は余計な事をしなければうまくいく。」という考え方です。
1979年に首相に就任したマーガレット・サッチャーが行った規制緩和や政府系企業の民営化などの小さな政府の推進が代表例ですかね。主人公はそういった”合理的に考える”を特徴的なパーソナリティとしてもっています。
代表的な発言が「人的資源管理」でしょう。第2巻では他国に対する評価として描写があります。
“兵員突撃させるだけの共和国軍司令部とは全く酷い時代錯誤の塊だろう。可能性を持った人的資源を徒に肥料として帝国に輸出しているようなものだ”
引用元:幼女戦記第2巻
ある意味人事部らしいといえますが、軍事作戦においても兵士を「人的資源」と喝破し、その非合理な使用については他国であろうと批判的な姿勢をもっています。
加えて、そもそも人的資源を無駄遣いする「戦争」にも反対の立場です。
また、ミクロの視点でも自身の部隊の構成員を盾代わりに使う事を想定するなど、非情とも受け取れる”合理的”な姿勢を持ちます。
また、逆に有用な構成員を育成することが理にかなっていれば労を惜しまず徹底的に鍛えることもします。
例をあげればキリがないので合理主義っぷりについては漫画を読んで確認ください。
合理主義でエリートだけどキャリアは思い通りにはいかない
紹介した通り徹底した合理主義の主人公ですが、必ずしも組織内で思い通りのポジションを得ていません。
主人公はエリートとして「安全な後方勤務」を希望しているのですが、とにかく激しい戦闘のある前線に送られ、苛酷な軍事作戦を遂行します。
この帰結は主人公の「コミュニケーション」に要因の一つがある事は明らかです。
平和を愛する主人公と、その他の登場人物の主人公に対する理解が全然かみ合っていない、アンジャッシュのコント的なコメディがいたるところで認められます。
例えば最も代表的な例として、レルゲン(現代企業だと人事部所属のエリートコースのトラックにのってる人)とのコミュニケーションがあるでしょう。
彼も優秀で将来を期待される人材であるものの、主人公の合理主義っぷりを危惧しています。というより主人公を狂人だと思っています。
しかし、主人公は狂人扱いされていることを全く理解できていません。
レルゲンが主人公の狂気を恐れて前線から異動させようとすれば、主人公は「私の事を慮って後方への配置転換を検討してくれている」と理解します。
主人公が戦争を終わらせるために「戦争の仕方を知っていても、勝利の使い方は御存知ないように思われました」と苦言を呈すると、レルゲンはその発言をもって主人公を戦争狂だと評します。
お互いの発言の意図を面白いぐらい共有できていません。
他にも、図書館でのゼートゥーア(現代企業だと経営企画部の部長)とのコミュニケーション、北方方面軍司令部とのコミュニケーションもそうでしょう。
主人公は向こう見ずな発言をしているわけではなく、周囲を観察し、合理的に対象者から必要とされている事項を検討し、自身の一言一句を吟味し、発言を行います。しかし、主人公が望むような意思決定、結論に相手を導びく事はできていません。
意思決定・コミュニケーションにおける「感情」の影響
この点について私は「感情」に対する理解不足があると考えています。
主人公は「認知(think)」のプロセスに知見はあっても、「感情(feel)」の理解不足で損をしていると私は感じます。
そしてそれは現代の企業組織内で働く30代に少なくない示唆があると思ってます。
経営学における感情のマネジメントでは、一般的に感情は以下の三つに分けて考えます。
感情の3種類
- 分離感情:怒り、喜び、憎しみ、恐れ、嫉妬、驚き、悲しみ、ねたみなど
- 帰属感情:“陽気な人”、“心配性”“怒りっぽい”など感情の個性
- ムード:組織、チームになんとなく漂っている感情。雰囲気
ここで、主人公とレルゲンとのコミュニケーションを例にとると、主人公はレルゲンの以下の感情を理解できていないように見受けられます。
- 幼女が人を人的資本扱いし、合理的な発言をする事への「恐れ」(分離感情)
- レルゲンの“心配性”(帰属感情)
- 軍首脳部の主人公への評価・取り扱い(ムード)
これは読者である我々だからわかるという事もありますが、少なくとも“全く幼女らしくしない”という点において主人公が周囲の人間の感情(feel)に対する理解が不十分である事を示唆していると感じます。
この感情(feel)の理解の不足こそが、コミュニケーションの失敗、さらには思い通りにキャリアを描けない主人公の状態の要因であると感じます。
そもそも主人公が転生するきっかけになったのも、リストラした社員の感情がわからなかったからでしたね。
翻って現代社会においても、我々30代が自分の思い通りのキャリアを実現しようとした際、あらゆる場面で「自他の感情を理解しマネジメントする」能力は必須要件と感じます。
従来は同じ日本社会で育ってきた同質性の高い組織だったので文脈の共有、感情の理解は容易だったかもしれません。
しかし、昨今の多様性推進によって組織の同質性は低いものとなるのが大きな流れでしょう。その際、感情の理解は30代にとっては避けられない課題です。
さらにAIの台頭によって感情をマネジメントするという人間特有の能力には注目が高まっているともいえます。
まとめ
『幼女戦記』の主人公は合理的で優秀で現代社会の歴史を知っていてもなお、自分の思い通りのキャリア(後方勤務)を歩めません。
これは現代社会で中間管理職に差し掛かる30代にとっても示唆があるのではないでしょうか?私は「感情」に配慮したコミュニケーションに要因があると考えましたが皆さんはどうでしょう?
漫画はとにかくおススメです!ご意見あればTwiiterでコメントいただけると嬉しいです!(^^)!